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湯と山ノート

宇奈月・黒部の温泉文化マガジン

浴衣の着方、初心者が迷わない八つの段

部屋着として渡される薄い一反は、湯まちの黄昏を格上げしてくれる演出家です。ただ、いざ帯を結ぼうとすると段取りが分からず戸惑う方も多い。ここでは鏡が苦手な人でも順に進められるよう、動きの順に分解します。

浴衣 着方 初心者 旅の心得
夕灯のともる湯宿の縁側に整えられた紺地に朝顔模様の浴衣
夕灯のともる湯宿の縁側に整えられた紺地に朝顔模様の浴衣

浴衣は夏の衣装と思われがちですが、湯まちでは四季を通じて室内着として登場します。通年用の布はやや厚めで、冬の宿でも思ったより温かい。だからこそ着崩さず着こなす価値があるのです。

まず、道具を並べる

着付けの前に揃えるもの
ものあると助かる点
腰紐二本胸元と腰の位置を仮留めできる
帯(兵児帯)最後に結ぶ。二重に巻くと結び目が安定する
扇子か小さな手拭い胸元の盛りを整える棒わりに使える
下駄裏の泥を払っておくと縁側を汚さない

手順は八つの動きで足りる

  1. 肌襦袢を着ておくと裾が決まりやすい。
  2. 背中心を背骨に合わせ、肩から布を下ろす。
  3. 左右の襟元を軽く握り、右前から左前へ重ねる。逆は避けるのが作法。
  4. 腰骨の高さで裾丈を量り、余りは腰で折り返す。
  5. 胸元で左右の身頃を揃え、一本目の腰紐で留める。
  6. 折り返しの山を崩しながら上から撫で、背中の襞を平らに伸ばす。
  7. 二本目の腰紐で上端を留める。緩みは帯の手前で潰しておく。
  8. 兵児帯を二回巻き、脇でリボン状に結んで完成。
夕灯のともる湯宿の縁側に整えられた紺地に朝顔模様の浴衣
紺地に朝顔の模様は、夕の湯まちによく映える。灯火の色にかき消されない、やや濃い色合いを選ぶと安心。

鏡なしで挟む二つの近道

  • 襟元の開きは拳一つ分が目安。肩の斜面に布を寝かせるつもりで整える。
  • 帯の締め具合は、片手の拳がぎりぎり入る程度。食後の余裕を見込んで。

湯上がりに着替えるときの注意

髪が湿ったまま着ると襟元に匂いが残ります。乾いた手で襟を整えること、下駄の裏を拭くこと、着替えを小分けしておくこと。この三点を守ると着崩れの悩みは大幅に減ります。

袖まで整えたら、外へ

着付けが終わったら縁側に出て、湯まちの夜気に一度肩を通しましょう。湯めぐり手帖の散歩路にある足湯や軒灯も、装いが整えば格段に楽しめます。着るという行為そのものが、旅の一部になっていくのです。

翌朝の反省会、三行で終える

脱いだ後に手早く振り返っておくと、次の宿での立ち上がりが速くなります。

  • 襟の後ろが偏っていたら、三番の手順での重ね方が甘い。
  • 腰紐の跡が痛ければ、六〜七番の締め直しが過剰だった。
  • 帯の結び目が寝ている間にほどけていたら、二回巻きの二周目を強く。

この三行のメモは、手帳の最後の一頁に貼っておくのが長年の慣わしです。浴衣は反復してこそ馴染む布。二度目の湯まちでは、きっと初回より五分だけ早く身仕度が終わるはずです。

柄の選び方、短い覚書

湯まちで借りる浴衣の柄は、意外にも「遠くで見た時に沈むか」だけで決めて差し支えありません。近寄って初めて分かる細やかな文様より、通りの中で輪郭が守られる大きな模様の方が、夜風に揺れた時の表情が豊かです。

  • 紺と藍系は、いずれの宿の灯りでも滲みにくい定番。
  • 白地は湯上がりの頬を明るく見せる半面、夕暮れには光を取り合う。
  • 縞柄は縦の流れが着姿を引き締め、歩幅も軽く映る。
畳の上に並べられた白い腰紐と一揃いの下駄
畳の上に並べられた白い腰紐と一揃いの下駄

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