平野の桜便りが片付いた頃、山あいの湯まちはちょうど開花の途中です。新幹線沿線の話題が終わったからと引き返すのは惜しい。花期の差分そのものが、山の湯まちにだけ許された二次公演なのです。
川沿いの桜は湯気を背景にして咲くため、花の白色に湯の白さが滲みます。晴れた日は区別がつきにくく、曇り空の日の方が、不思議と花の輪郭がはっきりします。
- 花筏が堰に溜まる場所は、散策路の続きが開けるサイン。
- 満開の宣言より、五分咲きの川沿いの方が湯気との干渉が際立つ。
- 花弁が湯に乗る瞬間は、翌朝まで待たずとも立会える。
川の上流ほど開花は遅れ、湯口の並びまで花便りが登ってくる頃には、谷全体が薄紅と白煙の二層で満たされます。花期の地図を頭の中で逆さに読む楽しみは、山あいの湯まちにしか許されていません。
春の湯まち訪問の下拵えは春先の観察ノート、年間を通した花と湯の行程は黒部峡谷の四季まとめをお読みください。
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