年度末の湯まちは、静けさの遍歴期です。旅人の数が減り、雪の反射が増える。この時期の湯まちには白紙の頁のような趣があり、思わず長居をしてしまいます。
眺めのよい縁側を選ぶ基準は簡単です。南東に開けているか。冬の太陽は低く、東南からの斜光しか届かない。その光が雪面に横柄に反映されているかどうかで、座る席を決めるのです。
湯気の鑑別も少し遊べます。靄なら風向きに従い、雪なら舞いながら沈む。湯は必ず立ちのぼります。この三者の比率を読むだけで、その日の大気の性格が掴めます。
縁側の茶碗には、湯まち特有の「溶かす楽しみ」があります。雪国暮らしの工夫が詰まった卓上で、はかどらない午後を一つだけ許してください。年度末の静けさは、そういう時間のためにあるのです。
この季節の湯先での拵えは冬の服装の三階層、雪を伴わない峠越えの対応は四季まとめの二月条へ。
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