秋の気配は、山の頂から下りてきます。平地がまだ真夏日を続けていても、湯まちの朝の空気にはもう硫黄の匂いの乗り方が違う。湯の匂いは季節によって変化するのです。冬は白く立ち昇りすぎて抽象的、夏は湿って手前に垂れる。初秋の匂いは、その間の切れ味が鋭くなる。
芒草が刈り取られずに眺めよく熟していたら、山の向こう側にはもう紅葉が走り出している合図でもあります。湯の匂いと草の匂い、この二つが同時に空気に乗る二週間が、実は一年でもっとも湯まちらしい時間だと思っています。
| 対象 | 変化のあらまし |
|---|---|
| 朝晩の湯気 | 拡散せず、柱状に立つ時間が延びる |
| 虫の声 | 昼の蝉から、夕の鈴虫系へ交代が進む |
| 旅人の服装 | 半袖に羽織の組み合わせが目立ちはじめる |
紅葉の頂点の予報と心構えは、続く十月中旬の紅葉と湯の記へ譲ります。年間の季節環は黒部峡谷の四季まとめに位置づけました。
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